ある一冊の本(前編)

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私は人生において大きく影響を受けた本があります。

2015年に中村暁野さんと中村俵太さんが創刊した「家族と一年誌」という雑誌です。

創刊者の中村さん家族が1年をかけてひとつの家族を密着取材するという、”家族”をテーマにした雑誌です。

家族と一年誌との出会いは2015年5月16日に原宿のVACANTで行われた、家族と一年誌の創刊イベント「家族とお祭り」に行った時でした。

妻が行きたがっていたイベントで、翌月6月に出産を控えお腹が大きくなっていたので、私も付き添いを兼ねてついて行くことになったのです。

妻から前もって話は聞いていたのですが私はあまりピンときていなくて、どのようなイベントなのか、わかっていませんでした。

しかしイベント当日にいざ会場に入ると、そこには個性豊かな出店者が軒を連ねていて、不思議と心が踊ったのを覚えています。

chiobenを食べて、TARUI BAKERYや小さじいちのパンを買ったりと、センス溢れる社交場!?に慣れていない私にはすべてが新鮮に見えました。

イベントは入場に列を作るほど来場者がとても多く、人で埋め尽くされ賑やかでした。

人でいっぱいなのに会場は平和的で、初めての雰囲気に私は刺激をたっぷり受けました。

その中でも一番衝撃を受けたのはたくさんの大人の中に紛れて、当時中学生のANAN coffeeアナン君がコーヒーを提供していた事でした。

輝く大人達に混ざって堂々と大人の嗜好品である珈琲を提供する中学生に度肝を抜かれました。

イベントではまず最初に妻が雑誌「家族と一年誌」を購入しました。

編集長の中村暁野さん自らがブースに立って販売されたいたので、妻は歓喜していました。

その時私は”妻が買った本”というくらいで、あまり気に留めていませんでした。

その後家に帰宅して妻が夕ご飯の片付けをしてくれている間、イベントでの余韻もあり私はその本が気になり、パラパラとめくってみました。

読み始めると、どんどん内容に吸い込まれてしまい、そのまま止まることなく一気に読み込んでしまいました。

購入した妻よりも先に読み尽くしたのです。

「家族と一年誌」の創刊号は、イベントで珈琲を提供していたあのアナン君一家の1年間を追いかけた内容でした。

東京から鳥取県に移住して、森の中でセルフビルドした家で暮らす家族のドキュメントに、こんな生き方もあるのだと今度は本を通して衝撃を受けました。

家族の何気ない普段の写真はどれも美しく、写真からも温もりが伝わってきました。

そして家族の絆や尊さを感じました。

自分たちの意思で行動している家族の姿を見て、自分の人生は自分で道を決めていくものなのだと私は強く思いました。

当時私は東京の会社に勤めていました。アパレル企業の管理職だったのですが、未熟ゆえに仕事に追われる日々でした。

持病があり妊娠中だった妻の体調が悪い時には一緒にいて助けてあげたいと思っていても休みを取ることはなく、自分は仕事を休めないんだと決め込んで働いていました。

自分で決めた人生だったのに、なぜかこうしなければいけないという固定概念に縛られていたと思います。

そんな固定概念を家族と一年誌が溶かしてくれました。

自分の人生にとって何が重要なのか、そして自分で勝手に決め込んでいた枠にとらわれる必要はないという、人生に於いて大きなヒントをもらいました。

話は戻り、家族と一年誌を熟読した次の日、密着されていたアナン君一家が私が当時働いていたお店に偶然来店するという奇跡が起こったのです!

そこでお話をさせていただき、前の日に家族と一年誌を読んで感動したという事を、熱が冷めないまま直接伝えることができました。

見ず知らずの私の声にご家族は驚いていましたが、とても喜んでくださいました。

見えない何かによって引き寄せられたような出来事でした。

後編へつづく

kenta