感染者が増え続けているコロナ禍の日本で、これからの経済について不安なニュースばかりが目に入ってきます。観光業やイベント関係、ライブハウス、夜の飲食店など直接的な影響があり事態は深刻ですが、アパレル業も同様にコロナ ウィルスによる大きな打撃を受けています。
外出が出来ないとなれば、新しく洋服を購入するきっかけもなくなり、先行きが見えない不安から節約傾向になってしまうのも当然のことだと思います。
国内では耐えきれずに40社ものアパレル関連の企業が倒産してしまいました。
米国では「BROOKS BROTHERS」が経営破綻に陥ってしまい、昔から大好きだったブランドだけに衝撃は大きかったです。
ブルックスブラザーズの経営理念「最高品質の商品だけをつくり、取り扱うこと。 適正な利益のみを含んだ価格で販売し、こうした価値を商品に求め、その価値を理解できる顧客とのみ取引すること。」
服を生産販売する者として(事業規模や歴史は雲泥の差で月とすっぽんですが…)この理念は自分たちが守っていくべき指針にもなっていて、芯があっても夢破れてしまう現実に、なんだか虚しさや恐怖を感じてしまいます。
「最高品質な物を適性な利益のみを含んだ価格で販売する」
それは当然な事に思えますが、今の時代ではそれがまかり通らず、行き着く先が今回の経営破綻だったのかもしれません。
ただ楽観視は出来ないですが、このコロナパンデミックは強制的に大きく変わるチャンスだという事には間違いないと思います。
1月のこれから寒くなるという時に冬物のSALEがはじまって、暖房のきいた店内に夏物の新作を並べ、夏服の本格的な着用時期である6月〜7月にSALEがはじまって、猛暑のなか冷房のきいた店内に冬物の新作を並べはじめるというアパレル業界の慣習。
入荷してすぐに買った洋服が着用時期になれば半額になって売られしまう。
目先の利益だけを追求してしまうと、長い目で見た時に売り手にも買い手にも不利益が生じてしまいます。
そしてバランスが大きく崩れてしまっている需要に対しての供給量。
アパレル業界全体の売れ残りは生産量に対して50%以上に膨れ上がっているのです。
はじめからSALEで販売することを視野に入れて作られる大量の洋服たち。
物を購入するときは1円でも安く買いたいと思うのは当然ですが、行き過ぎた安売りや大量生産によって大切なものがどんどん失なわれています。
先日縫製工場の社長さんと商品の打ち合わせの時にコロナの影響について話しをしたら、冗談のように「このタイミングでうちももう工場やめようかな」と言っていました。
この悪循環の流れは止めなくはなりません。継続可能な未来のために、適性な生産量と適性な価格、質の確かな物を求めていかなければアパレル業界の先はないでしょう。
個性ある多くのブランドがどんどん消滅して、どの街にも行っても同じ顔のお店や同じ顔のメーカーだらけになってしまうかもしれません。
そんな事を言っている私たちも物を作り、それを売らなければ生活ができないので矛盾は感じてしまいます。
たくさん買ってもらいたいけど、無駄にはして欲しくない。
売るための服ではなく、着るためにある服。
一つ一つの商品に愛情を持って生産し、その価値をわかってもらえる方に購入してもらえるように。
未来のことを想像して、自分たちのできる範囲で、多くを求めず、誠実に歩んでいけば、おのずと道は開けると信じています。
2世紀にも渡り誠実に価値と伝統を守り続けてきたブルックスブラザーズの経営理念は、私たちとって永遠のスタンダードでもあります。
Kenta